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民族音楽の変化記号

民族音楽と言ってもトルコ古典音楽で使われる変化記号。
現在、トルコ古典音楽の世界では西洋の楽譜、五線譜が使われている。
ただ、伝統的に西洋音楽には無い音程を使用するため、独特の変化記号が導入されている。

ここで述べるのはトルコ人の音楽学者、ヒュセイン・サデッティン・アレルHüseyin Sadettin Arel(1880-1955)、スプヒ・エズギSuphi Ezgi(1869-1962)の系列の理論によるもの。

この理論では音程比9:8の大全音(約203.9セントcent[※1]、有効精度4桁)を9等分した微小な音程をコマkoma(約22.66セントcent、有効精度4桁)とする。

1コマ高くする変化記号
1koma高く(変化記号)

1コマ低くする変化記号
ar_kb.gif

4コマ高くする変化記号
ar_bd.gif

4コマ低くする変化記号
ar_bb.gif

5コマ高くする変化記号
ar_kmd.gif

5コマ低くする変化記号
ar_kmb.gif

8コマ高くする変化記号
ar_bmd.gif

8コマ低くする変化記号
ar_bmb.gif

9コマ高くする変化記号
ar_td.gif

9コマ低くする変化記号
ar_tb.gif

(出典:Türk Mûsikîsi Web Siteleri http://www.turkmusikisi.com/より)

最小の音程はコマとなるが、2コマなどの音程は通常使われない。
トルコ古典音楽で使用される音程は以下の通り。
音程名コマ値セント値略記号
コマkomaあるいはファズラfazla122.66セントF
エクスィク・バキイェeksik bakiye367.97セントE
バキイェbakiye[※2]490.56セントB
キュチュク・ミュジェンネプkücük mücennep[※3]5113.2セントS
ビュユク・ミュジェンネプbüyük mücennep[※4]8181.1セントK
タニーニーtanîni[※5]9203.8セントT
アルトゥク・イキリartık ikili12271.7セントA

この内、エクスィク・バキイェeksik bakiyeの音程は、あまり使われない。
またビュユク・ミュジェンネプbüyük mücennepは、マカーム[※6]・ウッシャクMakam Uşşâkでは、旋法の終止音(トルコ古典音楽の音名でドゥギャーフDügâh音、西洋音楽の音名で言うと1点イ)とそのひとつ上の(高い)音(トルコ古典音楽の音名でセギャーフSegâh音、西洋音楽の音名で言うと1点ロ)の間で使われる音程だが、8コマでは無く、7コマとされており、タンブールTanbur(トルコのロングネックリュート)奏者の中にはそのためのフレットを特に設けている者もいる。
実際の楽譜の読み取りでは1コマ高く・低く、4コマ高く・低く、5コマ高く・低くの6種の変化記号を知っていれば、ほぼ問題ない。

下記はWikipedia "Makam"項より。
Comma_Line.gif

ドとレの間が9等分されているのが分かる。
上側がシャープ系の変化記号、下側がフラット系の変化記号。

楽譜の一例。
変化記号の無い全音は9コマ、同じく変化記号の無い半音は4コマとして扱われる。
ベヤーティー・メヴレヴィー・アーイーン

キョチェク・デルヴィシュ・ムスタファ・デデKöçek Derviş Mustafa Dede(1683没)作のベヤーティー・アーイーニ・シェリーフィBeyâtî Âyîn-i Şerîf'iの内、ソン・ユリュクSon Yürük)の最初の部分の旋律(neyzen.comより)

1小節目、ラとシの間の音程は5コマ。シとドの間の音程は12コマ。ドとレの間の音程は5コマ。
4小節目、ミとシャープの付いたファの間の音程は8コマ。ミと(シャープの付かない)ファの間の音程は4コマ。

※1 セントcent法は、イギリス人音楽学者アレクサンダー・ジョン・エリスAlexander John Ellis(1814-1890)によって提唱された対数を使って音程をあらわす方法。1オクターブを1200セントとする。12平均律に調律されたピアノの半音は100セント。同じく12平均律に調律されたピアノの全音は200セント。

※2 バキイェbakiyeの名はアラビア語の音程名バキーヤbaqiyyaに由来する。バキーヤの意味は「残り」。更に、このアラビア語の音程名は古代ギリシア語の音程名レインマλεῖμμα leimmaに由来する。レインマの意味は「残り」。アラビア語の音程名バキーヤbaqiyyaは、9世紀の哲学者・音楽理論家キンディーAbū Yūsuf Ya‘qūb ibn Isḥāq al-Kindīによって導入された。現代の西洋音楽学ではレインマはリンマlimma(音程比256:243、約90.22セント)として知られる。

※3 キュチュク・ミュジェンネブkücük mücennebとも。キュチュクは「小さい」の意。

※4 ビュユク・ミュジェンネブbüyük mücennebとも。ビュユクは「大きい」の意。

※5 アラビア語のタニーン(「鳴り響くような」の意)より。

※6 Makamは、トルコ古典音楽の音楽理論用語。アラブ古典音楽のمقام(ラテン文字転記:maqām、マカーム)に由来する語。西洋音楽における「音階」や「旋法」のようなもの。

参考
Wikipedia"Makam"
http://en.wikipedia.org/wiki/Makam

Türk Mûsikîsi Web Siteleri
Türk Mûsikîsi Nazariyatı
SİSTEMLER
1.Bölüm GENELDE MAKAM VE MAKAMIN KURULUŞU
4) Hüseyin Sadettin Arel'de Aralıklar
http://www.turkmusikisi.com/nazariyat/sistemler/huseyin_sadettin_arelde_aralik.htm

平凡社音楽大事典「西アジア - トルコ」項(柘植元一)

科学史の散歩道
 ファーラービーの音律論
  ファーラービーの音組織(1) ウードでの2オクターブの音の配置
http://www2.ncc.u-tokai.ac.jp/suzuki/Music/ArabMusic/Farabi/FarabiUdSystem1.htm

Neyzen.com
http://www.neyzen.com/

改定履歴
2010/04/06
タニーンについて追記

2011/03/28
文字表記について修正
エクシク・バキイェ→エクスィク・バキイェ
マカム→マカーム
ドゥガフ→ドゥギャーフ
セガフ→セギャーフ
キョチェク・デルウィシュ・ムスタファ・デデ→キョチェク・デルヴィシュ・ムスタファ・デデ

関連記事
トルコ古典音楽の音程名
http://minzokuongaku822.blog122.fc2.com/blog-entry-7.html
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テーマ : 民族音楽
ジャンル : 音楽

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